歌舞伎「勧進帳」の弁慶

奥州への逃亡の最中、安宅の関を突破する件が題材の「勧進帳」。この時の弁慶の衣装には、水野先生が弁慶のキャラデザの際「歌舞伎の弁慶の着物の模様?」と書かれていた、あの梵字があります。梵字そのままというより、かなりシャープなデザインになっていたと思いました。この梵字は、不動明王を表すカンマン。
何故、お不動さんなのでしょう。「勧進帳」を得意とする梨園の市川家は、成田屋。成田といえば、成田山新勝寺、成田不動です。市川家は、成田山のお不動さんを篤く信仰していました。その為、弁慶という僧にもこのカンマンを付けたのでしょうか。やや横道に逸れますが、成田山新勝寺は、平将門公の調伏を行っていました。弁慶の修業した比叡山も、平将門を調伏する為の祈祷が行われていました。比叡山と成田山には、こんな共通項があったのです。また、比叡山には「将門岩」と呼ばれる巨岩もあります。

さて、その「勧進帳」の中で弁慶の着た衣装の模様は、なんと「弁慶格子」と呼ばれる格子柄。過日銀座の呉服店で、その手拭いを見付けた時はビックリしました。それまで、こういった物があるなど、全く知りませんでしたから。
現物を見ながら作ってみました。色もだいたい↓こんな感じです。

何でも、市川家の得意な演目なので「市」の字を太い縞一本(恐らく市を一に引っかけたのでは…)で、「川」は細い縞三本で表しているとか。

あいにく、まだ「勧進帳」を生で観たことはないのですが、過日NHK-BSで京都・醍醐寺薪歌舞伎・勧進帳を見ました。弁慶は市川團十郎さん。やはりこの格子を纏ってらっしゃいました。色は、画面で見る限り白地に黒格子だったような…。

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